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インタビュー カラダも脳も、健康リスクが高まり始める働き盛り
40代、50代こそ、“ブレパ”を気遣うベストタイミング

岩田 敦 先生

東京都健康長寿医療センター 脳神経内科 部長岩田 淳 先生

人生100年時代を、より自分らしくイキイキと幸せに生きるために――。エーザイは、脳の健康度「ブレインパフォーマンス(通称:ブレパ)」の維持向上を提唱しています。
“ブレパ”に役立つスペシャルインタビューは、脳神経の専門家として認知症の診断・治療・臨床研究に尽力されている岩田淳医師。専門医のお立場から、なぜ働き盛りの40代、50代こそ、“ブレパ”の維持向上に取り組むことが大切なのか? ご自身の体験も踏まえ、幅広くお話しいただきました。

脳の形状ではなく、働きを見るのが“ブレパ” 日々使っているスキルが鈍るのが低下のサインです

── まずは、専門医のお立場から、脳の健康、および“ブレパ”についての見解をお話しいただけますか?

岩田 敦 先生

働き盛りの世代にとって、日々の仕事や生活をより豊かに充実させるために欠かせないもの。ひとことで言えば、それが、脳の健康度「ブレインパフォーマンス(通称:ブレパ)」だと私は理解しています。また、脳の健康といえば脳ドックを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、脳の健康度というのは、じつは脳ドックだけでは測れないのです。もちろん、MRI(磁気共鳴画像撮影法)やMRA(磁気共鳴血管撮影法)による脳ドックでは、脳の断面画像や脳血管の状態を調べることは可能です。しかし、例えば認知症のひとつであるアルツハイマー病による脳の萎縮は、かなり症状が進まなければ見られません。ですから“ブレパ”では、脳の形状ではなく、「脳の機能」を見ることが大切。そして、脳の機能は、じつは記憶力の良し悪しだけでも測れないんですね。

── 記憶力の良し悪しだけでは測れない“ブレパ”。日常の中でわかりやすく見つけられる低下のサインは、何かありますか?

年々、タレントやたまにしか会わない知り合いの名前が出てこなくなった。受験で覚えたことをほぼ忘れてしまった…。よく聞く話ですが、これは“ブレパ”が低下したサインではありません。なかには、50代になっても難しい微分積分の問題を解ける人もいますが、忘れてしまうのが普通です。なぜなら、学生時代の国語、算数、理科、社会…、こうしたスキルは、社会に出た後は、特定の職業の人を除いてほとんど使うことがないからです。また、人の名前でも国の名前でも普段使わない言葉は、誰でも年を取ると出にくくなってきます。しかし、脳全体の能力を考えたとき、それも正常な老化現象の一つです。一方、“ブレパ”低下のサインとは、仕事や生活の中で、日々使い続けているスキルやパフォーマンスが鈍ることだと思います。

仕事の効率アップには、記憶力よりも並行処理能力?
料理を手際よく作るためにも、じつは“ブレパ”が大切です

── “ブレパ”を意識している人と、いない人では、どんな違いが出てくるとお考えですか?

岩田 敦 先生

例えば「並行処理能力」に差が出るのではないかなと思います。そして、それは日常生活のパフォーマンスにも直接関わってくることです。

家事でいえば、まずは、お料理ですよね。3つぐらいのコンロを同時に使って、お料理を手際よく作る。どの鍋がどの時点で沸騰して、どの時点で何を入れるか。ランダムなワークフローを調整して、連続的に処理できる人は、じつはすごく高い能力を使っています。さらに冷蔵庫にある物を記憶し、それを使って料理の献立を工夫できることも高い能力です。これらを日常的にやっている人は、たぶん脳の働きは落ちないのではないか。エビデンスはないですが、私はそう考えています。

また、仕事においても、記憶力よりも「並行処理能力」が大事かもしれません。同じような案件をいくつか抱えて、それぞれの状況を把握しながら、適切な指示を出すことが求められる。40代、50代になると指示を出す側に回ることも多いと思うので、“ブレパ”を意識することは、やはり、仕事の効率にも直接関わってくるのではないでしょうか。

自分の衰えに“ハッ”とした時が、
“ブレパ”の維持向上に取り組むベストタイミング

── そして、取り組むタイミングですが、なぜ40代、50代が望ましいのでしょうか?

40代、50代といえば、カラダも脳も、なんとなくピークを過ぎたと自覚しはじめる年代ですよね。私の仕事でいえば、20代、30代は当直しても、びくともしない。けれども今は、当直の4時間睡眠は、ちょっとつらい。しかも、健康診断の検査の数値は、年々、高くなる。とはいえ、特に気になる症状がないと、別にいいかとスルーしてしまう。そんな年代です。恥ずかしながら私も、2011年の3月11日に起きた東日本大震災まで、“ブレパ”対策を何もしていませんでした。

けれども、あの3・11の時に、身近な人が大変な目に遭ったり、死ぬかもしれないという状況を味わったこと。さらにマンションのエレベーターが止まって、12階を階段で3往復した際に、体力的につらかったこと。そこで初めて「何か取り組みをしないとダメだな」と、ハッと気づかされた。以来、炭水化物を減らすなどして食生活を見直し、週2回、朝5時から走るようになりました。

これは私の場合ですが、40代、50代の方は、それぞれに思い当たるふしがあるのではないでしょうか。仕事でも家事でも今までさらっとできていたことが、できにくくなる。体力の低下、思考力の低下に「あれ?」と感じる。自分の衰えにハッとする。それが、“ブレパを”意識するためのサインであり、その人にとってのベストタイミングではないかと思います。

“ブレパ”の維持向上のコツは、気づいた時に始めて続けること
続けるためには、遊び心をもって楽しむことも大事

── 先生ご自身のご体験も踏まえて、“ブレパ”の維持向上のポイントと、上手く続けるコツを教えていただけますか?

早すぎるということも遅すぎるということもなく、気づいた時に始めること。そして、始めたら、ちょっとつらくても頑張って続けること。それが“ブレパ”の維持向上につなげるポイントの一つだと思います。ですから私も頑張って、学会先でもいつも走るようにしています。

その結果、年々、高くなっていたコレステロールや血圧の数値も下がり、今あらためて、あの時やり始めて良かったと実感しています。この9年半、もし走っていなかったら、筋肉はもっと衰え、何かの病気の初期症状が出ていたかもしれない。でも自分ができる範囲の生活改善を続けたおかげで、少なくとも今の私には“やらなかった後悔”はないからです。

岩田 敦 先生

── 脳の健康を意識することはカラダの健康にもつながる、だから続けることが大切なんですね。

そうですね。とはいえ、コツコツ続けることは大変ですよね。「明日死ぬつもりで生きる」とよく言われますが、そんなにプレッシャーをかけ続けて生きられるほど、人間は精神力が強くありません。ですから、続けるためには「遊び心を持って楽しむこと」も大事ではないでしょうか。

例えば私の場合、続けるモチベーションは“位置情報ゲーム”です。2016年夏、友人の研究者とやり始めた当初は、ほんの興味本位だったのですが、ある時、学生から「先生、まだこのレベルなんですか?」と言われて、負けず嫌いに火がついてしまった。さすがに今は走りながら捕まえてはいませんが、以来、この2つは私にとって走る楽しみであり続けてくれています。

また続ける大切さということでいえば、私がよく患者さんにたとえとして使うのは、国際宇宙ステーションの宇宙飛行士の話です。ステーションの中で、宇宙飛行士は毎日何時間も自転車を漕いでいる。宇宙には重力がないので、何もしなければ地球に戻ってきたときに立てなくなってしまうので、毎日自転車を漕いで負荷を与え続ける必要があるからです。そして、じつは日常の生活も同じで、毎日何もしない座ってばかりの生活をしていたら、健康な人でもあっという間に運動能力も脳の働きも落ちてしまうんですよ、と。

40代、50代からの人生をより幸せなものにするために
COVID-19による、生活様式の変化も一つのきっかけに

── 今、COVID-19(新型コロナウィルス)で、社会全体がストレスフルになっています。その中で、特に心がけたい“ブレパ”対策を教えていただけますか?

COVID-19(新型コロナウィルス)による生活様式の変化で、今、何でもなかった人の運動能力や脳の機能の働きが低下しています。また、さまざまなストレスにさらされている人も多いと思います。私たち医療関係者も、患者さんの対応時にやらなくてはいけないことがいろいろ増えています。

しかし、見方を変えれば、環境が変わった時こそ、一つのきっかけになるのではないでしょうか。なぜなら、“ブレパ”においては、環境が変わった時の対応力が一番試されるからです。

40代、50代からの20年は、より長く幸せに生きるために大切な20年だと考えたときに、自分の手の届くところにあったはずのいいことは、やっておいたほうがいい。また、“ブレパ”を楽しむということでいえば、スポーツ、音楽、映画、読書、何でもいいから楽しく続けられる趣味を持つこと。それは私自身の体験も含めて、ぜひ、みなさんにお伝えしたいことです。

岩田 敦 先生

── 最後に人生100年時代の「脳の健康管理」の重要性についてのメッセージをいただけますか?

これは私の座右の銘でもあるのですが、人間というのは、結果はどうあれ、やったことへの後悔は意外に後を引かない。逆に、やれたのにやらなかったという後悔は、後々まで引きずる可能性が高い。それは「脳の健康管理」においても同じだと思います。

脳の健康も、カラダの健康も、目的は同じ。自分らしくイキイキと幸せに生きることなのです。今、働き盛りの40代、50代から“ブレパ”を意識して、カラダの健康と同じように、できることに取り組んでいく。そのうえで、より多くの人が、幸せに長生きできる、脳とカラダの“健康寿命”を伸ばしていくこと。それは、私の医師としての目的、願いでもあります。

profile

岩田 淳(いわた あつし)

東京大学医学部附属病院神経内科の専門外来「メモリークリニック」にてアルツハイマー病(AD) やレビー小体病、前頭側頭葉型萎縮症等の疾患の診断、治療に当たる。特に早期段階でのAD、レビー小体病の診断が専門。2020年4月より現職。